(BBF発売前のため、三輪と米屋が同じクラスになってます。)




「あんたたちはわかってない。近界民に家族や友人を殺された人間でなければ、近界民の本当の危険さは理解できない。近界民を甘く見ている迅は、いつか必ず痛い目を見る。


お前もだ、みょうじ。」



三輪くんは、私に鋭い視線向けながらそう言った。しかし、私は何も言い返さない。いや、言い返せなかったの間違いかな。

ずっと黙りこんでいると、嵐山さんが私を守るように前に出て来て「甘く見ているってことはないだろう。」と言った。



「迅だって近界民に母親を殺されているぞ?5年前には師匠の最上さんも亡くなっている。親しい人を失うつらさはよくわかっているはずだ。それに……、」



嵐山さんが私を気遣うように、此方に視線を送る。…まあ、別に隠してるわけでもないし、三輪くん達になら話してもいいよ。
そう伝えるように私がへらっと笑えば、嵐山さんはほっと胸を撫で下ろした。そして、また三輪くんに向き直り、口を開く。





「それに、みょうじだって近界民に家族を殺されている。」

「っ!?」



その言葉に、三輪くんが目を見開いて私を見る。あはは、三輪くんのその顏初めて見たなーなんて、その時の私は場違いなことを考えていた。



「 近界民の危険さも、大事な人を失うつらさもわかったうえで、迅には迅の、みょうじにはみょうじの考えがあると俺は思うぞ。」


「……っくそ!!」



嵐山さんがそう言うと、三輪くんはつらそうに顏を歪ませながら地面を殴った。






三輪くんと玉狛の女の子02





「なまえ。次、移動教室だよーって……どしたの?今日はずっと眠たそうだね。」

「あー…うん。昨夜、急に任務入っちゃってさ。ちょっと、寝不足なんだぁ。」



目をごしごししながら言うと、親友のゆうちゃんは「ボーダーの仕事って大変なんだね。」と哀れみの表情を浮かべた。


いや、うん。今回のは、ほぼ間違いなく迅のせいなんだけどね。何と言うか、あいつの趣味の暗躍に利用されたって感じ?……うーん。それは、それで何かムカつくんだけど。
でも、最近玉狛に入った新人くんの黒トリガーが狙われてるって聞いたら、そりゃ私だって黙ってられないよ。泥棒はダメ、絶対!


まあ、作戦は上手くいったし、迅には今日の放課後に特大パフェ奢ってもらう約束とりつけられたし、ほんと良かった良かった。



なーんてことを考えてたら、ゆうちゃんは私の頭にチョップをいれた。っうぅ、いったーい。



「グスン、ゆうちゃん!暴力反対〜!!」


「やかましい。ほら、早くしなきゃおいてっちゃうよ?」

「…むぅ、はーい。………………ん?ゆうちゃん、次の授業ってなんだっけ?」


「なーに、寝ぼけてるの?6限目は美術でしょ。今日から色塗りに入るから、必要なのは絵の具セットだけだよ。」



「ゆうちゃん………」

「……なに?まさか、」





「絵の具セット、忘れてきた。」

「早く借りてきなさい。」



呆れ顏のゆうちゃんに「先に行ってて!」と告げると、私は急いで隣のクラスへ向かった。確か、隣のクラスは先週から色塗りに入ってるはず…!



「よーねーやーくーん!」

「お、みょうじじゃん。どうした?」



廊下側の席らしい米屋くんは、私の呼び掛けにすぐに応じる。うん…昨夜、戦った相手とは思えない態度だ。まあ、そんなとこが米屋くんらしくて良いところなんだけど。

私は、授業開始まで時間がなかったので、急いで彼に用件を伝えた。



「あの、絵の具セットを貸していただきたいのですが…!」


「絵の具セット?……あー。俺、美術の授業は防衛任務とよく被るから、まだ色塗り段階に入ってねぇんだよな。」

「え、つまり……?」



「絵の具セット持ってきてねぇわ。」

「Noーー!!!!!」



まさかの持ってきてないパティーン!!!

どうしよ、どうすりゃいいの!?時間は残り5分。此処から美術室までだと走ってギリギリくらいだ。あーもう!これは忘れていくしかないのかああああ「おい秀次。お前、絵の具セット持ってる?」あああ……………ん?



「みょうじが借りたいんだってよ。」

「っ、なんで俺が玉狛の人間なんかに…!」



み、み、三輪くん!!!!!そうだ、このクラスには三輪くんがいたんだった!!!!!



「三輪くん!!!お願いします!絵の具セット貸してくださいいいい!」

「断る。出水に借りればいいだろ。」


「ああ、弾バカは午後から防衛任務でいねーよ。」


「…………。」

「………三輪くううんんん!」


「……チッ、今回だけだからな。」



三輪くんはそう言うと、自分のロッカーから絵の具セットを持ってきてくれた。やばい、三輪くん優しい!神様!!超感謝!!!



「三輪くん、ありがと!!!この恩はいつか必ず…!」

「うるさい。さっさと行け。」



私は三輪くんから絵の具セットを受けとると、廊下を猛ダッシュした(当然、また途中で先生に怒られた)。そして、何とかチャイムギリギリに美術室に滑り込む。………ふう、危なかった☆


ちなみに借りた三輪くんの絵の具セットは、彼の性格を表しているように綺麗で(私の絵の具セットより綺麗だった…)彼は絶対にA型だなと思いましたまる






そうして無事に美術の授業を終えた私は、彼が帰ってしまわぬうちに返そうと、LHR後急いで彼の教室に向かった。



「三輪くん、ありがとうございました!!!!!」

「………ああ。」


「?」



あれれ何だか元気ないなぁ、三輪くん。もしかして、私と同じ寝不足が原因かな…?うん、きっとそうだ。

よく見たら隈とかできてるし、いつもサラサラな髪も今日はボサボサしてる。三輪くんって、なんかこう……繊細そうだし、昨夜のこともあって寝れなかったのかもしれないなぁ。


同じ隊の米屋くんは、ピンピンしてたけどね←



心配になった私は、少し俯き気味の三輪くんを下から覗き込みながら声をかけた。三輪くんの顏はやっぱり青白くて調子が悪そうだ。



「三輪くん、大丈夫?」


「…なにがだ。」


「疲れてそうな顔してるよ。少し寝た方が良いんじゃないかな?」

「黙れ。お前には関係ない。」



「あっ防衛任務入ってるなら、私が代わってあげるよ?絵の具セットの借りもあるし。私は、授業中たくさん寝たから、もう全然眠くないし!」

「黙れと言ってるだろ。あと、授業中に居眠りをするな。」


「だって、昨夜は全然睡眠時間なかったんだもん!あの後も迅のせいでボーダー本部まで行くはめになったしさぁ。」

「……っ、」



私が昨夜のことを話題に出すと、三輪くんはあからさまに顔を歪めた。………おっと、この話は彼にはNGだったか。


でも、もしこのことで彼が悩んでいるのだとしたら、





「大丈夫、三輪くんは間違ってないよ。」

「!?」


「近界民はみんな敵!……っていうのは少し言い過ぎかもだけど、近界民は確かに私達の大切なものを奪っていくんだもん。敵視するのは当然だよ。何もおかしいことはない。
むしろ、おかしいのは私達の方だから。三輪くんは何も気にしなくていいんだよ。」


「………自分がおかしいと気づいていながら、なぜ近界民を庇う。どうして玉狛にいる。」



三輪くんの質問に私は「ふふー、いい質問だね!」と冗談っぽく笑った。



「私にとってね、玉狛の皆は家族同然なの。家族を失って独りぼっちなってしまった私を、林藤さんが"うちに来いよ"って誘ってくれて、迅や小南ちゃん達も歓迎してくれて…まるで本物の家族のように接してくれた。
もちろん、近界民を憎いと思ったことは何度もあるよ?でも、今の私は近界民を駆除したいとか、そういう強い復讐心はなくて……家族を、仲間を守りたい。その思いが一番強いんだ。

だから、私は玉狛にいる。玉狛が私の居場所なの。」



私は真剣な表情でそう言った。すると動揺したのか、三輪くんの目は揺らいでいて……しかし、すぐに私から目を逸らすとチッと大きく舌打ちをした。わあ、怖い。

そして、彼はまた鋭い目を真っ直ぐ私に向けて、口を開いた。



「お前が玉狛にいる理由はわかった。だが、俺はそれを認めたわけじゃない。
近界民は全て敵だ。そして、その近界民の味方をするお前達、玉狛支部は裏切り者だ。」
 
「うん、考え方は人それぞれだからね。三輪くんがそう考えるなら、私はそれを否定しないよ。」



「でも、私は三輪くんと仲良くなりたいと思ってるけどね!」とウインクすれば、三輪くんは眉間に深いシワを作り、何も言わずに教室から出て行った。無視ってやつですね。うわー傷つくなぁ。


でも、



「…ちょっとだけ、三輪くんと仲良く慣れたかも?」

「そうかぁ?みょうじ、ポジティブ過ぎんだろ。」



ずっと近くで話を聞いていた米屋くんは、呆れ顔でそう言った。



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